サーメランドの冬

ノルウェー雑記

カラショクでは10月になると日はどんどん短くなり、また、気温もマイナス30いくらまで下がりました。私たちは9月になると冬支度をしなければなりませんでした。

トラックの荷台に山ほど積まれたストーブ用の木(暖を取るにはまきを焚くストーブそれに一応家じゅうが暖かくなる石油ストーブ、両方を使いました。たいていのノルウェーの家ではそうです。オスロでは日本で言うマンションに住んでいたのでセントラルヒーティングでした)が届きました。それが届いた日から、夫は毎日仕事から帰ると地下室でその山のように積まれた木を相手にのこぎりを持って格闘していました。12月に入ると2回マイナス42度を経験しました。その中をサーメの博物館に出かけたのですが、すべてが凍り付いている感じでした。煙突の煙が真っ白でまっすぐ空に上っていました。風がないので寒いとは感じなかったのですが、ベビーカーに座りっぱなしの娘にはかなり答えたようでした。

雪は10月には降り、それは春まで解けない雪になりました。そう多くの雪でもなく、私の膝ちょっと、という所でした。あたりいちめ真っ白な世界でした。

サーメの女性の写真を添えつけています。彼女の衣装でははっきりしませんが、丈は彼女の膝までしかありません。雪がそこまで降るから、です。

いや、白くはなくて、12月ともなると、夏の白夜とは大違いの真っ暗な世界が続きました。雪の白い世界ではなく灰色の世界に見えていました。日は上ることなく遠くの二つの小山の間がタバコの火をつけたくらいに真っ赤になって、しばらくそんな線が見えているだけでした。

そんな中を、朝、7時ごろ夫は仕事に出かけていました。窓から見える夫の歩みは遅く、まるでロボットの様に見えました。帰宅した夫のひげにはいつも氷が付いていました。

近所には仕事仲間の教師たちが住んでいたのですが、ある女性教師は頭にはスカーフを巻き、日本では夏のものであろうバスケットを手に、外の坂をスキーで。さっそうと滑り降りていました。まるで『スプーンおばさん(ノルウェーの漫画です。以前、NHKで流していました)』を見る思いでした。彼女は元々現地の人、つまりサーメの人であの寒さ、冷たさ、暗さにもすごい強い心の持ち主だと思いました。

毎日、毎日、真っ暗でした。ずうと家の中は灯りをつけっぱなし。時に雪嵐がやって来て・・・そんな雪嵐の日はいつもよりヒーターの温度を高く設定し、ストーブを焚き続けなければなりませんでした。

しかし、皮肉なことに、そんな日に限って停電…。考えたらそれもありうることなのですが、つまり、嵐のために送電線が切れてしまって電気が来なくなってしまうのです。そうなるとお手上げ。ずっと真っ暗な中、電気が回復するのを待つのみ、ヒーターは付かないし、まきを燃やすストーブのある居間にしかおれずで、電気で調理するので料理もできず・・・。

今、考えると懐かしいし、いい経験をさせてもらったとは思います。

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